元理学療法士の教える健康法

腰痛コルセットの危険性

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腰痛コルセットはあくまで治療用

 

「するとしないじゃ大違いだよ。」って、テレビでも盛んに売り込んでいる腰痛コルセットです。通販なんかでもけっこうな値段の物も売ってたりして、中には効果の根拠のない磁石が入っている物もまことしやかな効能を謳って販売しています。

長く使うんだからある程度の値段の物を買っとかなきゃ。なんて思われる方もおられるでしょうね。

しかし、腰痛コルセットはあくまで治療用です。つまり、ぎっくり腰などを起こした場合に一時的に腰の固定をするための物なのです。

いわば骨折や捻挫をした時のギプスやテーピングの様なものなのです。治ってしまったら外さなければいけません。

固定というものは関節に大きな負担をかけます。例えば骨折をしたときにはギプスで折れた骨を挟む上下の関節を固定しますが、骨がくっついてギプスを外すと固定した関節はほとんど動かない状態になっています。

元通り動くようになるには固定した期間の約2倍の期間のリハビリが必要だと言われています。また固定した関節を動かす筋肉も衰えてしまいますのでこれも元に戻す運動療法が必要になってきます。

ですから、腰痛コルセットは本当に腰を痛めた時にするものであって、一旦よくなれば予防のためにと常時するものではないのです。

腰痛コルセットの仕組み

人間のおなかには風船があると思ってください。腹筋などによって構成される風船です。ちょうど下の画像の赤丸のような感じと思ってください。この風船のふくらみを腹圧(腹腔圧)といいます。

 

人が直立するときは下の画像のようにその風船(腹圧)が前から脊柱を押さえ、背筋が脊椎を中心に向かって引っ張りバランスを取って立てるのです。

その風船を膨らませているのがインナーユニットと呼ばれる深層の腹筋、骨盤の筋肉、背筋の一部、横隔膜の四つの筋肉なのです。(あとで詳しく)

しかし、インナーユニットが弱ってくるとその風船がしぼんでしまいどうしても前かがみの姿勢になってきます。そしてまっすぐ立つためにはすべての背筋群が風船のしぼんだ分がんばって引っ張らなければならなくなるのです。

そのうち背筋はその重労働に耐えきれなくなって体を支えることができなくなるばかりか、背筋群自体が損傷したり腰椎が不安定になり腰椎の関節を簡単に捻挫したりします。

事によっては椎間板ヘルニアまで起こすこともあるのです。それが腰痛の原因です。

そこで登場するのが腰痛ベルトです。コルセットでお腹を締め付けることでしぼんだ風船の張りを取りもどし前から腰を支える力を一時的に復活させるのです。

もちろん背筋のサポートという側面もあります。

腹圧を高めることが体幹を支えるのにいかに重要かは重量挙げの選手を見ればわかります。

重量挙げの選手はみんな腰に頑丈なベルトをしています。

アスリートは十分筋肉を鍛えているとはいえ、極限までの重量を持ち上げるとなると腹圧をベルトで一時的に強化する必要があるのです。

楽=弱体化

確かに、腰痛コルセットをしていると腰が楽です。しかし楽という事は筋肉を使っていないという事に他ならないのです。

そして、楽という事には筋肉の弱体化という代償を払わなけれななりません。

筋肉が弱くなると腰椎の安定性がなくなり容易にぎっくり腰などを起こすようになります。

サポーターなどもそうですが何事もサポートすると自力が弱くなります。

腰が痛ければ腰椎コルセットをすること自体に異議はありません。

しかし、それはあくまで治療目的でいずれは使用をストップしなければならないという事です。

腰痛が良くなってきたら筋力トレーニングと併用する

腰痛が酷い時は安静が一番です。しかし、日常生活に差支えのない程度になってきたら腰痛コルセットは装着してもいいですが、筋肉が衰えないように運動療法を並行して行わなければなりません。

腰痛コルセットは腹圧を維持する作用がありますので当然腹圧を維持する筋肉の役割を奪うことになります。

それによって腹圧を高める筋肉が弱くなります。その筋肉を強化することが運動療法の目的となります。

腹圧を構成する筋肉

腹筋全般に腹圧を高める作用がありますが背部にもに腹圧に関与している筋肉はあります。

その中でも最も腹圧に関与していて運動療法に適している筋肉はインナーマッスルといわれる体の表面より深いところにある筋肉です。

腹腔を構成し腹圧に直接関与する筋肉は腹横筋、横隔膜、多裂筋(背部にある)、骨盤底筋群で、この四つの筋肉をインナーユニットと呼びます。

 腹横筋

腹筋は外から腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋と層をなして一番内側にあるのが腹横筋です。腹横筋は腹腔全面を覆うように肋骨の内面から骨盤や恥骨についています。

腹横筋はからだの動きには関与しない筋肉でもっぱら腹腔内圧を高める作用があり腰椎の安定を保っています。

 横隔膜

横隔膜は、腹腔の上部を形成する薄い筋肉で主に腹式呼吸で息を吸う時に収縮して下がり胸郭の内圧を下げ肺に空気を取り入れるちょうどピストンのような働きをします。

また収縮して下に下がることで腹圧を高める作用があります。

 

 

多裂筋

多裂筋は体を後ろに反らす働きがありますが、背部の一番内側にありインナーユニットのの背面をカバーしています。

骨盤底筋群

骨盤底筋群は複数の筋肉でインナーユニットの底面を構成しています。支給や棒鋼などの内臓を下から支えたり便や尿を我慢したりするときに働きます。

 

インナーユニットの鍛え方

基本的にインナーユニットは腹圧を高めて呼吸を助たり排泄を促したりする筋肉で特に腹横筋などは体幹の動きには関与しません。

ということはということはよくある腹筋運動では鍛えられないという事です。

横隔膜と腹横筋の鍛え方

横隔膜は収縮すると下へと押し下がり胸郭を広げ陰圧とし空気を肺に取り入れます。つまり腹式呼吸を行います。

腹式呼吸は横隔膜と腹横筋の両方を鍛えることができます。

腹式呼吸のやり方

まず背筋をを伸ばしてゆっくりと鼻から空気を吸い込みますこの時、肩が上がらないように、またお腹がふくれるように意識します。

ちょうどおなかに空気をためるような感じで吸い込んでください。この状態で横隔膜は最大に力を発揮しています。

次に吸った空気を口をすぼめて吸った時間の2~3倍の時間をかけて吐き出していきます。

吐く時は肺の中の空気を残らず吐き出す感じでお腹をへこませていきます。お腹が最もへこんだ状態でできれば数秒間その状態を維持してください。

これを20回から30回行います。できればそれを一日2,3回行うといいでしょう。

また、併用してドローインというエクササイズも簡単にできて腹横筋の強化になりますので試してみてください。

骨盤底筋群の鍛え方

骨盤底筋群を日常で意識的に使う時は便意や尿意を我慢するときです。つまり肛門をキュッと締めるような動作をするだけで鍛えられます。

 

多裂筋の鍛え方

多裂筋自体脊椎の安定を保つ役割があり、あまり大きな動きをする筋肉ではないのですが他のインナーユニット筋と密接に連携しています。

多裂筋の鍛え方にはダイアゴナルという有名な運動方がありますので動画でご紹介しておきます。

総括

腰痛ベルト、サポーターはあくまで痛みが取れるまでを目安に使いましょう。

外す前には運動療法を併用しながら腰痛ベルトに頼らなくてもよい状態を作ることが必須です。

楽だからと、だらだらと装着するのは筋肉の弱体化を引き起こしますのでお勧めしません。

しかし、引っ越しや大掃除などの重量物を移動させたりするイベントがある時など期間を限定して予防的に使うことは大いにお勧めします。

 

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