元理学療法士の教える健康法

脊椎圧迫骨折は手術するのか

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この記事の目次

いつの間にか骨折は圧迫骨折

平均寿命が延びそれに伴い骨粗鬆症の高齢者の方も当然増えます。

脊椎圧迫骨折はもろくなった椎骨の椎体が体重による負荷に耐え切れずつぶれる現象の事を言います。

<椎骨>

骨折といってもポキッと折れるイメージではありません。クッキーを手で強く押すとくしゃっとつぶれる感じだと思ってください。

昔は圧迫骨折といえばとび職の人が足場から転落して負傷するものと相場が決まっていました。

近年は人口高齢化により高齢者のいつの間にか骨折的な圧迫骨折が多くなって圧迫骨折といえば高齢者というイメージが定着してきました。

脊椎圧迫骨折の原因

先ほど書いたように高所から転落してしりもちをついたりすると若い人でも圧迫骨折を起こします。

しかし骨粗鬆症気味の高齢者の場合、最も多いのが椅子に腰かける時に圧迫骨折をおこしてしまうのです。

もちろん転倒して尻もちをついた場合も当然原因として挙げられますが、いつの間にか骨折と呼ばれるほどの圧迫骨折はそんな事故でなくても起こしてしまいます。

高齢になり下肢の筋肉が弱ってくると立ち上がりの能力が落ちてきます。

という事は同時に座る時のスピードの調節もできなくなってしまうのです。

イスに腰かける時、ある程度かがんだらあとは体重が支えられなくて重力に任せてドシンと座ってしまう。

多くはこんな時に圧迫骨折することが多いのです。

脊椎圧迫骨折の場所

圧迫骨折は腰椎に起こると思われがちですが、実は圧迫骨折は腰椎よりも胸椎の方が多いぐらいなのです。

脊椎は頚椎が7個、胸椎が12個、腰椎が5個、仙椎が1個がすべて縦に連なって波打った構造になっています。

脊椎には体重だけがかかるのではありません。体を支える筋肉の収縮力や姿勢によるレバレッジにより体重以上の圧力がかかります。

例えば上を向いて寝ていても脊椎には立っている時の25%の圧力がかかっています。

前かがみになると直立している時の150%の圧力がかかるのです。

ちなみにまっすぐ立っている時に第5腰椎には体重の60%の圧力がかかっています。

意外に思われるかもしれませんが脊椎にかかる圧力は、立っている時より座っている時の方が1.5倍も大きいのです。

それだけ脊椎にかかる圧力は複雑で筋肉の収縮力や、てこの原理の様なものが作用してきます。

その構造からして椎体に一番衝撃が加わりやすいのが胸椎の12番~腰椎の1番なのです。右の画像では青と黄色の境目です。

事故において、若い人が圧迫骨折を起こすのは確かに胸椎の12番か腰椎の1番が圧倒的にい多いです。

しかし高齢者では、腰椎全般に圧迫骨折を起こす可能性があります。

圧迫骨折の症状

別名いつの間にか骨折というぐらいですから、強烈な痛みはなく、なんとなく背中が痛い時期があったと回想する患者さんもおられます。

しかしそんなことは稀で、殆どは強い痛みを伴います。特に起居動作で強烈な痛みを感じます。

夜間寝ていても寝返りで痛みのあまり目が覚めたり寝られなかったりします。

上の脊椎画像で椎体と反対側に飛び出した部分を棘突起といいます。

棘突起は外から触れます。前かがみになると背中に等間隔に出っ張ったところが棘突起です。

圧迫骨折した椎骨の棘突起あたりを軽く叩いてみると前に響くような痛みを生じます。

とにかく、それらしい自覚症状があればとにかく安静が必要です。

脊椎は体重を支えますので、動くことによって状態は容易に悪化します。

少しでも自覚症状で圧迫骨折の疑いがあれば、急いで病院を受診しましょう。

脊椎圧迫骨折と診断されたら

圧迫骨折の治療は、骨折の程度次第です。

軽度であればコルセットを処方され通院治療で自宅安静となり、自分から痛い動作をしないことが基本となります。

自宅療養の場合家族構成も問題になってきます。一人暮らしの場合はまず無理でしょう。

食事の支度、洗濯、入浴、などしなければならないととてもじゃないけれど自宅療養は無理です。

自宅療養の場合は少なくとも常時一人は昼間でもいる状態が望ましいでしょう。

入院治療の場合、殆どは保存的な治療で済む場が多いようです。

まず4週間はベッド上で安静、食事、排泄はベッド上で入浴はできません。

看護婦さんから体を拭いてもらう程度になります。

5週目からリハビリが始まります。痛みの具合によっては6週目から歩行訓練も始まります。

長期間のベッド上での安静は様々なリスクを伴います。全身の筋力はかなり低下します。また、認知症を発症するリスクもあります。

丁寧な病院では5週目以前でも痛みの状況に合わせて下肢の運動療法を行ったりします。

平均的にはほぼ2か月で退院できます。

椎骨の状態によっては手術をしなければならないこともありますがほとんどは保存的療法で治ります。

最新技術として椎体増幅形成術といってつぶれた椎体に特殊なセメントを注入して膨らませ固めてしまう治療もあります。

手術というよりは局所麻酔をかけた後、太い注射により行われますので傷跡も残りにくく、入院期間も少なくて済みます。

但し今のところ、骨セメント治療については健康保険の対象外になります。

脊椎圧迫骨折の予防

まず、かかりつけの先生に骨密度の状態を検査してもらいましょう。

そして治療が必要であれば積極的に投薬を受けてください。

適度な運動で特に下半身の筋肉を鍛えましょう。

下半身が強化されれば、座る時、階段を下りる時などに脊椎にかかる負担を軽減できます。

骨粗鬆症と診断された場合の運動は必ず先生の指導を受けて行いましょう。

たまに、運動で圧迫骨折を起こす方もおられます。

圧迫骨折が治ったら

椎体の損傷状況や治療法にもよりますが腰のすぐ上のあたりが盛り上がったような姿勢になります。

つまり背骨の湾曲が正常でなくなります。

そのことにより、背筋などに余計な負担がかかったり頸を支える筋肉に余分な負担がかかり、肩こりなどを生じたりすることがあります。

圧迫骨折により脊椎のバランスが悪くなることで様々な後遺症の可能性が考えられます。

また圧迫骨折が治っても骨粗しょう症が治ったわけではありません。

圧迫骨折の患者さんには既往歴にやはり圧迫骨折があることがよく見られます。

つまり再発する人が多いということになります。

ですから、圧迫骨折が治ったからと言って安心せずに予防、つまり運動療法を積極的に行ってください。

運動療法は病院には頼れない。

大きな病院になるとリハビリテーション室を持っていて、理学療法士がいます。

しかし、その施設はほぼ入院患者さんのためのもので外来患者さんのリハビリは本人に任されます。

おそらくは何時間も待ってリハビリ室に入り理学療法士の指示を受けいろいろな器具や治療器によってほぼ気休めの気持ちのいい治療の後、運動療法を行います。

しかもその回数はたぶん数回で投げ出してしまうことでしょう。

待ち時間が長いわりに治療時間が短いなどの不満ができるからでしょう。

大事なのはリハビリの先生に自宅でできることをよく聞いて運動療法を自宅で行うことです。

リハビリによっては症例別の運動療法のパンフレットなどが置いてある場合もありますので必ずもらってください。

リハビリ全般に言えることですが、元の体に近づくには本人のモチベーション(やる気)が一番大切です。

もう一度頑張って元の生活に戻れるよう、を出して下さい。

圧迫骨折から死に至ることもある

これは脅しではありませんが、圧迫骨折がもとで自宅で寝たきりになり結局死に至ることもあります。

それぞれ、家族構成や、体格、経済状態など様々な条件の違いがありますが、とにかく頑張ろう!生きよう!という前向きな考え方が結局あなたの症状を改善する必須条件なのです。

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