マルチビタミンの危険性。
昨今、ドラッグストアのサプリメントコーナーにはマルチビタミンなるものが置かれています。
「1日一粒で一日の必要なビタミンを摂れます」という謳い文句がほとんどです。
しかもどのメーカーも結構手ごろな値段です。
よく、「コンビニ弁当ばかりで野菜がほとんど摂れていないけどマルチビタミン飲んでるから平気」といわれる方がいます。
コンビニ弁当ばかり食べているから本当にビタミン不足なのでしょうか?
最近では、コンビニ各社も消費者の健康志向を気にしてビタミンなどの栄養素を強化したいわゆる「ビタミン強化食品」などを販売しています。
ビタミン強化食品には「ヨーグルト」「ソフトドリンク」「シリアル」などや最近ではお菓子にまで特定のビタミンを強化したものが販売されています。
つまりコンビニ弁当生活していても足りているビタミンはあることが多いのです。
もちろん不足しているビタミンもあることでしょう。
だからといってほとんどの種類のビタミンを一気に体内に入れることは熱がある時あらゆる病気の薬を飲むようなものです。
ビタミンには過剰にとると様々な健康リスクを生じる場合があります。
マルチビタミンに対しては、結構否定的な評価があります。
しかし、各メーカーはこぞってマルチビタミンなるものを販売しています。
サプリメントという形で多種類のビタミンを摂ることは、体にとっていいのでしょうか?
何らかの弊害があるのでしょうか?そこのところを調べてみたいと思います。
まずはビタミンについて知りましょう
ビタミンとは
栄養素の内、特に大切なものがたんぱく質、脂質、炭水化物で三大栄養素と呼ばれます。これのほかにビタミンとミネラルを合わせて五大栄養素と呼ばれています。
五大栄養素は人の生命活動に必須のもので、中でもビタミンは微量に必要なものでありながら体内で十分な量を合成できないので食物から補充する必要がある栄養素です。
ビタミンには全部で13種類あり、水に溶けやすいビタミンB1,B2,B6,B12,C,ナイアシン、葉酸、ビオチン、パントテン酸、の9種類をを水溶性ビタミンといいます。
また油に溶けやすいビタミンA,D,E,Kの4種類を指して脂溶性ビタミンといいます。
それ以外にもビタミンのような働きをする微量栄養素でビタミンと違って体内で十分合成できる物質をビタミン様物質と呼びます。
各ビタミンの作用
日本人のビタミン摂取基準
「日本人の食事摂取基準(2015年版)」より、健康が気になる世代30歳~70歳以上に区分した各ビタミンの摂取基準を抜粋してみました。
各ビタミンの過不足症状
各ビタミンの摂取上限
マルチビタミンを飲む際不足を補うためなので不足は気にしなくてもいいですが気になるのは過剰摂取にならないかという事です。
そこで、各ビタミンの摂取上限(耐容上限量)を調べてみました。
水溶性ビタミンは尿で排出されるため特定のビタミンを除いて上限は設定されていません。
脂溶性ビタミンは人体に残留しますのでほとんど上限が設定されています。ビタミンKだけは過剰摂取による障害は報告されていないようです。
耐容上限量が設定さえているビタミンは次の通りです。
種類 | 男性 | 女性 |
ビタミンA | 2700μgRE/日 | 2700μgRE/日 |
ビタミンD | 50μg/日 | 50μg/日 |
ビタミンE | 18~29歳 850mg/日
30~49歳 900mg/日 50~69歳 850mg/日 70歳以上 750mg/日 |
18~29歳 650mg/日
30~49歳 700mg/日 50~69歳 700mg/日 70歳以上 650mg/日 |
ビタミンB6 | 18~29歳 55mg/日
30~49歳 60mg/日 50~69歳 55mg/日 70歳以上 50mg/日 |
18~29歳 45mg/日
30~49歳 45mg/日 50~69歳 45mg/日 70歳以上 40mg/日 |
ナイアシン | 18~29歳 80mgNE/日
30~49歳 85mgNE/日 50~69歳 80mgNE/日 70歳以上 75mgNE/日 |
18~29歳 65mgNE/日
30~49歳 65mgNE/日 50~69歳 65mgNE/日 70歳以上 60mgNE/日 |
酸葉 | 18~29歳 1300mg/日
30~49歳 1400mg/日 50~69歳 1400mg/日 70歳以上 1300mg/日 |
18~29歳 1300mg/日
30~49歳 1400mg/日 50~69歳 1400mg/日 70歳以上 1300mg/日 |
まずはこれを基準として各社マルチビタミンの成分と照らし合わせてみましょう。
今回はミネラル群は別の回にまわすことにしてビタミンだけを調べてみます。
主なマルチビタミン製品の評価
ネイチャーメイド マルチビタミン
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成分表を見てみましょう。基準値は男女とも30歳~49歳までとしました。
おおむね基準値を満たしていますね。主要ビタミンは基準値を上回っています。過剰による障害があるビタミンは基準値より少なめになっています。
耐容上限量のあるビタミンについてはどれも食物と重複して摂ってもさほど気にするような値にはなっていません。
ビタミンAとビタミンEが強化されている感じですが過剰を気にするような値ではないです。
というか、耐容上限まで摂るにはかなりの物を摂取しなければならないようです。
ディアナチュラ マルチビタミン
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ビタミンB群が強化されている感じですがビタミンCが少ないように感じます。
耐容上限が設けられているビタミンについては少なめに配合されている印象です。
ビタミンPとイノシトールが少量ながら配合されています。
DHCマルチビタミン
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可もなく不可もないという感じで優等生的なマルチビタミンです。
パントテン酸が若干他より多めに含有されています。
マルチビタミンの評価
マルチビタミンはすべてのビタミンが含まれているので食事と重複して摂りすぎることがあるので注意が必要という意見がありますが。
調べてみる限りでは、よく考えて作られており水溶性のビタミンは多めに、脂溶性ビタミンは若干少なめにという感じで各社とも安全性には十分な配慮が認められます。
また、各社とも13種類あるビタミンの内、ビタミンKだけが含まれていません。ビタミンKは腸内細菌によってもつくられますし、
いろいろな緑黄色野菜に多く含まれるため、通常の場合は不足する心配はほとんどありません。
ビタミンは吸収に条件があったり食べ物で摂る方が効率が良かったりという事があります。
ビタミンは単にそのビタミンを与えるだけでは吸収されにくかったり効果が弱かったりするのです。
さらにミネラルも必要となるためマルチビタミンを飲んでいるから野菜の摂取を疎かにするという事は避けなければなりません。
また、耐用上限はかなりの量になるのでビタミンの摂りすぎという事は一袋丸々飲んだりというような極端な場合を除いて
推奨用量を守っていれば過剰になることはまずありません。
マルチビタミンは有効しかし安全なのか?
近年野菜の摂取不足が叫ばれれています。
実際に、野菜はビタミンやミネラルの主要な供給源でありながら、その摂取量は、全世代平均で276.5gと目標値の350gに対して約74g不足しています。
この傾向は、若い世代ほど際立ち、20~40代では121~92gも不足しています。
ビタミンをサプリメントで摂るという事は現代においてはもはや必須となりつつあるようです。
サプリメントは飲んですぐ元気になるというものではありません。
しかし続けて飲むことにより特定の病気の予防になったり、時には治癒を早めたりする効果があると思われます。
サプリメントは薬品と違って国の審査がゆるい
長期間続けて飲むことのリスクは体内に蓄積されて有害になる物質が含まれていないかという事です。
その成分を製造する際に余分なものが残量していないかということが一番気になるところです。
サプリメントいわゆるトクホや機能性表示食品は食品扱いなので薬品と違って国の審査が緩く、審査期間も短いです。
商品チェックはメーカに委ねられているのが実情です。
そしてチェック体制は表示通りの成分が確実に含まれているかというところに焦点が当てられがちです。
また、有害成分が残量していないかというチェックはメーカーによりかなりばらつきがあるようです。
サプリメントを摂取する際は十分に会社を調べて本当に安心できるメーカーのものを選ぶ必要があります。
また、習慣的に長期間使用することを避け症状が改善すれば使用を中止することも大事です。
逆に、一定の期間使用しても効果が感じなければ即中止するという考え方も大事です。
マルチビタミンでがんのなどの死亡率が上がる
2011年に東フィンランド大学のモールス教授らが発表した論文では3万8千人の60歳以上を対象とした研究によると
「60歳以上の女性がマルチビタミンを飲み続けた場合、心疾患やがんなどの病気で死亡する確率が上がった」
と発表されています。
サプリメントは歴史が浅い
人がサプリメントとして栄養成分を摂り始めたのは最近です。
そういう行為自体に歴史的な経験の蓄積がありません。
体に良い成分でも人間は今まで食物から摂取していました。
ですから不足することが多く、また体もそういうことに対して耐えうる機能が備わってきたはずです。
それが、突然サプリメントで定期的に十分と言っていいほどの量を摂取できることで予測できない何らかの不都合がが出る可能性もあります。
例えば宇宙飛行士が宇宙空間で重力から開放されると骨がもろくなったり筋肉が弱ったりと重力に対する抵抗力が失われるということがあります。
テレビCMに騙されないで
テレビのCMでは一般人と称した役者さんであろう人がその効果を声を大にして語ります。
サプリメントは言われるままに購入使用するのは危険です。
十分な調査をし、製品選びを慎重に行い自分が本当に信頼できるものを選んでください。