第1章 市からの公共事業による立ち退きの申し出
始まりは町内説明会
始まりは消費税が8%に上がる前の年です。市の道路拡張工事について説明会がありました。
私はそんなことは関係ないと欠席しましたが。
翌日、お隣さんから「大変なことになったね」君の家も立ち退きにかかってるよと立ち話で言われ愕然としました。
立ち退き?この家から出て行くという事?
最初は何のことやらさっぱりわかりませんが漠然とした不安が頭をよぎります。
ちなみに私は自宅で自営業を営んでおりました。
そのまま家へ取って返すと早速、市役所へ電話をかけ立ち退きについて聞きたい旨を受付に話しまし。
受付から都市整備課に回されそこで担当者に「出来れば都合の良い日に訪問したい」と言われました。
急な話でしかも降って沸いたような話、私は一刻も早く詳細を知りたいので翌日の午後に設定しました。
立ち退きは市民の義務
懇談でいろいろ話を聞く中、道路整備は公共のためであって市民は協力する義務がある。したがって断ることはできない。という意味のことを話されました。
別に脅されたわけではありませんが一つの例として断り続ければ強制執行という事もあるとの事でした。
昔は粘れば条件が良くなった。
私の近所のビルのオーナーは60年ほど前木造2階建ての商店がそれも道路整備で立ち退きになりその時の話を参考とに聞きました。
当時そのオーナーは市会議員とか市の有力者との面識がありまた性格からしていわゆる「がめつい」というタイプで、
立ち退きに際しては毎日毎日、市役所に通っては無理難題をせがみ、結局、鉄筋4階建てのビルを一等地に建ててもらい、
一緒に住んでいた家族の権利も主張し別宅と土地を補償させました。
相手が民間で立ち退きをお願いされる立場なら現在でもそういうことは成り立つかもしれません。
なぜなら、民間による立ち退きには立ち退き補償のガイドラインという法的なものがいまだにないからです。
しかし公共事業による立ち退きにおいては今では考えられないことです。
現在はコンサルの査定がすべて!
消費税の増税を翌年にひかえ、どうせ立ち退くなら機嫌よく早めに承諾しようと家族で決定し、その旨を市役所の担当者に伝えました。
あっさり、承諾したので担当者もできるだけお力になりますからと心強い言葉を残して機嫌よく帰っていきました。
それからの予定としては数日後「株式会社〇〇〇コンサルタント」という会社から建物の査定に来るとの事で建物を査定するようです。
某日、コンサルタント会社から5名やってきました。
私の家も結構大きな鉄筋建物で建物の隅々から外回りまで測量していました。
朝9時から始まり12時過ぎまでかかりましたが、まだ測量するところがあるので明日も来るとの事です。
コンサルが帰り際、補償業務管理士という人が名刺を出し次の書類を揃えておいてほしいと言われました。まだ2,3回来るからとの事です。
その書類は次のものです。
- 過去3年分の所得税確定申告書の控え
- 過去3年分の青色申告決算書もしくは収支内訳書の控え
- 直近1年分の総勘定元帳
- 給料台帳(雇用者がいる場合)
- 電話、電気、水道の使用量通知書または口座振替通知書
- 長期借入金の償還予定表または明細書
- 営業許可証の写し
これだけの書類をそろえるのも一苦労です。
なんだか先行き不安になってきました。
立ち退き補償はこのコンサル会社の査定が動かしようのないすべてのものです。
公共事業による立ち退きの補償料は交渉の余地がない。
コンサルタント会社が出した査定額が全てで、こちらの都合だとか苦労だとかは査定に入りません。
ですから代々守ってきた土地だとかこの家を愛しているとか言った気持ちを訴えても補償額はびた一文上がりません。
もし交渉の余地があるとすれば査定の時に間違っていたところを指摘するとか、建物で見申していなかった箇所があったなど
事実誤認の場合だけ話は聞いてくれるでしょう。
次回↓