交通事故によるムチ打ちの症状は?
車での追突事故を経験した人は当初はとりあえず病院に行ってどこも怪我をしていないと思っても、なんとなく頸が重たい後ろへ振り向きにくいなど特に翌日に気が付くケースが多く病院に申告するケースがよくあります。
そこで改めて頸のレントゲン撮影を行うのですがほとんどの人は他覚的所見は見られません。
それでも、頸の不快感を訴える人がほとんどです。そしてムチ打ちになったと自覚します。
ムチ打ちは病名ではありません。そういう場合、診断書には頸椎捻挫と書かれます。いわゆる足首のねんざと同じ扱いです。
交通事故の代名詞のような傷病ですが、車が後ろから追突されたときに頸がムチのような軌道を描いてしなることにより頸椎の軟部組織に何らかの損傷を生じることです。
そのことからムチ打ち症状という名前で呼ばれるようになったといわれています。
ムチ打ち症状は厳密に言うと頸椎捻挫の初期症状の落ち着いた後に起こる頸から肩、腕にかけて起こる痛みやしびれ等の不快感のことを言いこれを頚肩腕症候群といいます。
時に頭痛やめまいを生じることもあります。
レントゲン等に異常がないことが多く他覚的な所見がないことから詐病扱いされやすく、特に交通事故においては被害者感情もあり正確な症状の見極めが難しい傷病です。
しかし、確かに症状に苦しんでいる方が現存することから患者さんの申告のまま、治療を続けざるを得ないのも事実です。
治療は長期にわたることが多く完全に症状が取れることはあまりありません。
最終的には肩こりのような状態が継続することが多いようです。
以前から肩こりで悩んでいた人でもこれは事故によって引き起越されたものだと錯覚しがちです。
ムチ打ちの治療
初期には症状にもよりますがネックカラーなどで安静固定します。手足の捻挫と同じで基本は安静固定です。
事故の大きさにもよりますが2週間程度で取れる方が多いようです。
固定するということは関節を動かさないことです。
関節は動かさないと関節拘縮と言って可動範囲が狭くなってしまいます。
これにより、ネックカラーを取ったときにひどい肩こりを感じる方もおられます。
頚肩腕症候群の場合、痛みから筋肉が緊張しその緊張からさらに痛みが痛みが増します。
その痛みがさらに筋肉の緊張を継続もしくは助長しそれがまた神経の痛みを増幅させるというスパイラル現象に陥っていることが多くみられます。
それを改善するにはブロック注射で痛みのスパイラルを断ち切るという治療が行われます。
そして緩慢な症状においてはリハビリにおいて物理療法がおこなわれます。
物理療法において最も効果を示すものは間欠牽引です。
下の画像のような装具と機械を使い頸椎をけん引、弛緩を繰り返します。15分ほど行います。
ただ、牽引療法は合わない人が時々おられます。気分が悪くなったり、特に顎に障害がある方や歯の治療中の方など適応できない方もおられるのが現実です。
そのほか、温熱療法や低周波通電など、頸の周辺筋群を温めて血流を促す治療が一般的です。
ときにマッサージなども行いますが頸はデリケートな部位なので熟練した施術師が行います。
よく、個人でマッサージ店などでマッサージをして来られ痛みが増したといわれる方もおられるので個人の判断による治療は医師に相談してから行ってください。
交通事故の治療費は?
交通事故に遭った場合自賠責保険とか任意保険で治療費は払われるので自己負担は全くありません。
と思っている方がほとんどではないでしょうか?
治療費は責任割合で決まる。
交通事故でも治療費が全額出るとは限りません。例えばこちらが歩行者で一方的に車に充てられたとか。
停車中に後ろから追突されたなど責任割合が自分0で相手100%の場合は全額相手側の保険会社から治療費は支払われます。
責任割合が50:50の場合いわゆる自損事故と同じ扱いでそれぞれの保険を使うことになります。
どちらにしても交通事故による治療費の負担はないのが普通ですが、場合によっては健康保険を使って治療し自己負担分を立て替えて後から保険会社に請求して変換されるという場合もあります。
また重大な過失が自分にある場合、特に飲酒運転や煽り運転などに起因する交通事故では保険の適用ができない場合も出てきます。
日頃から安全運転と運転マナーに気を付けてください。
ムチ打ち治療が長引くわけ「慰謝料」
交通事故となると治療費は相手側の損保が責任割合に応じて支払うことになります。
自分が停車中に相手からの追突となるとおそらく0:100で相手側の責任割合になります。
治療費はともかく、慰謝料として次のものが支払われます。
休業補償
負傷により休業を余儀なくされた場合、逸失利益の保証が受けられます。
通院交通費
通院に要した交通費が常識の範囲内で支払われます。過剰なタクシーの利用など認められないケースもあります。
入通院慰謝料
問題はこれです。交通事故により通院した場合通院日数に乗じて一定の額の慰謝料が支払われます。
自賠責では医療費を含めすべての保証の合計が120万円を限度に支払われます。
自賠責は対人保障だけで車両に関する保証はありません。
加害者側が任意保険に加入していれば車両の修理は任意保険から支払われます。
また対人保障もムチ打ちで3か月病院へ通院すれば100万円を超える入通院慰謝料が受け取れます。
このことが、交通事故によるムチ打ちの治癒を遅らせているといっては患者さんに失礼かもしれません。
実際、長期にわたりひどい症状に苦しんでおられる方もおられます。
しかしまた一方、通院することが目的みたいな、治療時間を極力短くしてほしいと我々に懇願する出席簿患者さんもおられます。
これが良くも悪くも整形外科病院のムチ打ちリハビリの現状です。